第一次浮浪者大戦

第一次浮浪者大戦
僕は浮浪者がかつてとても嫌いでした。
なぜ嫌いになったのか。
僕と浮浪者との血で血を洗う、戦いの歴史を綴ろうと思います。
僕の小中学生時代は、じぶん達の遊び場をかけて、クラス内での覇権をかけて、そしておのれの男をかけて、浮浪者と争っていました。
僕の浮浪者との出会いは、十三公園です。
その時は小学校にあがりたてで、好奇心だけが旺盛だったのを覚えています。
十三公園で遊んでいたある日のことでした。
家族で公園に虫採りにいっていたときのことです。
あまり虫がとれずにしょげていると、向こうから何やら大きな黒い人がやってきます。
ブルーの服を着た、全身が黒くて目だけが白く光っているのが印象的な、少し若い感じのおじさん浮浪者でした。
その人は、学校の先生や親たちとは全く違った人種に見えました。
人間ではない、野生人です。
その野生人が、セミの捕り方を教えてくれたり、カブトムシをどこからか捕まえてきてくれたりと、すごい人でした。
とても親切にしてくれるし、いつも遊んでくれない大人の中で唯一一緒に遊んでくれる大人ということで、公園に行ったらその野生人とよく遊ぶようになっていました。
最初は親も、理解を示してくれていましたが、あまりにも一緒にいることに不安だったのか、「あの人とあまり遊んだらいけません」と言われるようになって、遊びにくくなりました。
友達と公園に行ったときなんかも、その野生人と遊ぶわけにもいかず、逆に野生人と仲が良いということがバレるだけで、ハミゴにされるんじゃないかとかの小さな不安があって、野生人を次第に避けるようになりました。
野生人と会っても、無視するようになり、全く遊ばなくなりました。
そして気づくと公園には、たくさんの浮浪者がたむろするようになってきていました。
その浮浪者たちは、大人が公園にいるときは大人しくしているのですが、子供だけで遊んでいると、遊び場で寝だしたり、遊びを邪魔してきたりしてきます。
そして先生とかの大人に文句を言うと、「じゃあ十三公園で遊ぶのは禁止にします」ということになってしまいました。
遊び場を追い出された僕たち小学生としては、これでおさまりません。
「あいつらのせいで遊び場がなくなった!」と怒り心頭でした。
十三はただでさえ遊び場の少ないところなのに、公園まるごと遊べないとなってしまえば、もはや小さな公園で小さな遊びをしている小さな小学生に落ちぶれてしまうことは間違いありません。
「あの浮浪者達さえいなくなれば・・・」
僕たちは立ち上がりました。
遊び場を奪った浮浪者を公園から追い出すために、仲間を募って武器を持ち、立ち上がることにしました。
第一次浮浪者大戦の始まりです。
その頃は小学生だったので、武器といってもその辺に落ちてる石や木の枝だけでした。
中でも石は危ないし、ばれたら怒られそうな気がしたので、秘密兵器としてポケットの奥深くに隠し持っていくことにしました。
浮浪者に戦いを挑んだ我々小学生軍団が、公園に集まります。
もちろん、最初はただ遊んでいるだけのように見せかけないと怒られると思ったので、ボールで遊ぶふりをしていました。
そして、徐々に大声をだしたり、ボールを派手に周囲にぶつけていったりして、たむろってる浮浪者へ徐々に攻撃を加えていきました。
浮浪者はいつもと違うちびっ子に恐れをなしたのか、周囲からは退散していきました。
緒戦の勝利に酔った僕たちは、さらに奥へと進撃していきます。
公園にいてる浮浪者どもをまるごと追い出して、公園を我らの手に取り戻そう!と、意気揚々と進んでいきました。
十三公園の奥は昼間でも暗く、うっそうと大きな木々が茂る怖いところです。
そこへは滅多に入ったことはありません。まさに、未知の空間でした。
その未知の奥へ踏み込むと、浮浪者達の本拠地である、ビニールシートの家が現れてきました。
危ないところにいるという恐怖と興奮が入り混じり、調子に乗っていた僕たちは、そのビニールシートごと引き剥がしてやろう!と果敢に攻め込みます。
だがそこに、ブルーの服を着た男が現れました。
そう、かつてよく遊んでくれていたあの野生人です。
その野生人の傍に、奥から犬が現れました。
ドーベルマンだったと思います。
見るからに凶暴そうな犬で、もちろん鎖にも繋がれておらず、舌を垂らして野生人の指示をまっているようでした。
小学生の僕たちにとっては、浮浪者の大人でさえ恐怖の存在であるのに、犬までもが現れてしまい、もはや腰砕け状態でした。
そして犬がワンワン吠え出すと、僕たちは手に持つ棒を放り投げ、小学生軍団は総崩れといった状態で公園の外へと逃げ出してしまいました。
もはや仲間とは散り散りになり、軍勢は見る影もありません。
第一次浮浪者大戦に惨敗を喫した僕は、遊び場を失った責任により、クラス内の地位は地に落ち、また、外の遊び場がなくなったので、家でゲームをするだけという不健康な小学生生活をおくることになりました。
第一次浮浪者大戦は敗北に終わりました。
そしてそのまま中学校に進学した僕は、公園で遊ぶこともなくなり、
浮浪者との接点は無くなっていました。
もはや思い出すこともなくなっていた中2の夏、思わぬところで浮浪者と激突することになります。
第二次浮浪者大戦の始まりです。
小学生時代とは違い、知識とお金を得た中2の僕。
一体、どのような戦いが待っているのか。
あの、秘密兵器ドーベルマンに勝つ手段はあるのか。
乞うご期待!
続く

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