僕は中2の厨房になっていました。
第一次浮浪者大戦で敗北し、外での遊び場を失った僕は、公園で遊ぶこともなくなり(十三公園は立ち入り禁止になりました)友達の家でゲームをするだけという、つまらない人間に成り下がっていました。
もはや、反攻の気概もなくなり、メガネをかけていたため、メガネザルというあだ名をつけられた、しょぼくれた中学生生活を過ごしていました。
そんな中2の夏。
落ちぶれた僕に救いの手を差し伸べてくれた悪友と、花火をやることになりました。
もちろん、悪友なので花火を普通に楽しんで終わりなんていうことはありません。
東西に別れて、購入した花火を撃ち合うという花火遊びになりました。
その悪友は、悪いことをしていたのでお金があったのですが、僕は親とおばあちゃんにおこずかいをもらう、秘技
「ダブルおこづかい」
「勉強の本買うからお金ちょうだい」
等を駆使して、なんとか軍資金を作っていました。
それで、確か五千円ぐらい花火に使ったと思います。
大人になっても花火にそんなに使わないのに、ほんと、アホです。
それでも、一発千円ぐらいする打ち上げ花火なんかは買えないので、当然主兵器は、ロケット花火でした。
対戦相手である悪友は、悪いことをして貯めたお金(10万円ぐらい)で武器を仕入れていました。
さぁ、淀川河川敷でバトル開始です。
もちろん、火事を防ぐための水も用意しましたし、大人もいました。
その大人とは、河川敷に住む、浮浪者の皆さんです。
バレたらもちろん怒られるけど、若気の至りで勝手にそういうことにして自分達を納得させていました。
「とりあえず、大人はその辺にいてるし、なんか言われても大丈夫やろー」
というノリで東西に別れて、おっぱじめました。
(闘いぶりを書くと問題になりかねないので割愛)
闘いが終わり、髪の毛が燃えたり、服が燃えたりとみんな生々しい状態。
前髪をやられた僕は、それから一年ぐらい髪のちぢれが治らなかったぐらいです。
参戦者の中には、限定版のエバンゲリオンの服に穴が空いた奴とかもいましたが、とりあえず楽しく闘いは終えました。
その後、余った花火をなんとかせねばとなった僕らは、放置されていた机の引き出しの中に、花火をたくさん詰め込んで、点火しようということになり、やりました。
花火が鉄の机の中で反響し合い、ものすごい爆音がしました。
すると近くにビニールシートを建てて住んでいた浮浪者が、怒って出てきました。
首輪に繋がれていないドーベルマンも従えて・・・
中2なので、大人はまだまだ怖い存在です。
しかし、戦闘後の僕たちは強気でした。
かつて若かりし頃、第一次浮浪者大戦に敗北したことも、思い出しました。
まさしく、雪辱の機会が到来したのです!!
だがしかし。
僕たちは花火で攻撃することをやりませんでした。
いくら強敵浮浪者とドーベルマンといえども、戦火を潜り抜け、花火という近代兵器を装備した僕たちには敵じゃなかったでしょう。
ビニールシートに当たって燃えたらどうしよう。。
浮浪者に当たって怪我をしたらどうしよう。。
普通に心配がよぎりました。
この瞬間、浮浪者達は怖く強い存在ではなく、大人のみんなが思っているような
「弱い存在」
と、なってしまっていたのです。
そのため机が爆発せんとするぐらいの花火を詰め込んだ僕らは、点火して爆発させた後
「ヒョヒョヒョー」
と、みんなで走って帰りました。
檻がなくなりました。
浮浪者達のことを「恐るべきライバル」だと思っていた檻から解き放たれました。
しかし、それが良いことだったのかはわかりません。
僕にとって、強く怖い野生人としていつまでも目の前に立ちはだかる一人の男としてあって欲しかった。
今となっては、そう思います。