モンゴルという思想

モンゴルというと一般的には中国の北にあって大草原が広がる「モンゴル国」を言います。

ですが、モンゴル帝国の成立背景等をみていくに、どうも一つの国や民族だけを言う言葉ではない気がしてきました。モンゴルとは、もっと大きな「何か」ではないかと思うようになりました。

モンゴル族の発祥

モンゴル族の発祥の地は内蒙古、現在のウルンベル盟エルグン河の南岸の密林地帯で、室韋族から分離し蒙古室韋と呼ばれていた。その起源は匈奴説、チュルク説、吐蕃説、東胡鮮卑説があり、言語や風習などから中国では東胡鮮卑説に傾いている。
蒙古室韋族はその後次第に西へと移り多くの部族集団に広がり民族共同体が形成され、一部族名であった“モンゴル”が民族の名称になった。中国まるごと百科事典より抜粋

これを見ると最初からモンゴル族というのが広範に存在した訳ではなく、少しずつモンゴル族に編入されていったことが伺えます。

また

1206年にテムジン(チンギス・ハン)が蒙古の大汗に推戴され、蒙古国を建国、吐蕃王国を帰順させ、西夏王朝、契丹、女真、ウイグルと南宋を滅ぼし、1271年元朝を築いて併合した民族をモンゴル民族に融合させた。中国まるごと百科事典より抜粋

チンギスハンによってはモンゴル族が急速に拡大し、本来モンゴル族とよばれていなかった人達までモンゴル族と呼ばれるようになっていきました。

最盛期のモンゴル帝国

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これに関して杉山正明さんがこんな事を述べられています。

『「モンゴル」とは、きわめて融通性にとんだ集団概念であった。しかも、それは、版図の拡大につれておなじように膨張した。きわめて弾力性のあることばであり、人間組織であった』遊牧民から見た世界史

『「モンゴル」という独特の集団概念に端を発した拡大運動は、しだいになかば自動装置のようになりゆき、その結果「モンゴル」への所属意識を共通項としてもつ人間の渦がら幾重もの同心円状をなして、ユーラシアサイズでひろがったのである』遊牧民から見た世界史

これを読むに、モンゴルは一つの民族を言うものではなく、「軍門に下って仲間になった人はみんなモンゴルだよ!さあ、君もモンゴルにならないか??」ということのようです。当時の人はモンゴルに加わる事で安全保障・宗教の自由・交易の利益が得られるようになり、そこに人類史上初めて世界というものが意識されるようになったのです。

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またモンゴルとは、狩猟民族の頂点に君臨する概念であるとも言えます。

これはアジアにおいて農耕民族の頂点に君臨していた中国(中華思想)という概念に真っ向から対立するものであり、これこそがモンゴルと中国を相容れない関係にしている最大の隠れた要因ではないでしょうか。(1919年に中華民国の武力によって自治を撤廃されたことだけが中国を嫌う理由だとしたら少し弱いように感じてしまいます。曲がりなりにも独立を保ち続けた日本人にはわからないかもしれませんが・・)

また内モンゴル人は人口480万人と、モンゴル人280万人の倍近く人口がいます。モンゴルから見た内モンゴルは、狩猟民族からすれば大地を傷つける行為である農耕と中国からの投資によって内モンゴルは潤っているように見えているのでしょう。人口が負けている数量的な恐れと、中国と一緒に自分たちより発展してきた内モンゴル人が許せないんだと思います。

またモンゴルと中国国境にある中国側の町「二連」に私が2年前に行った時、モンゴルへ向けてこれみよがしと新築の建物が作られていました。これらのことも、モンゴル人の怒りを助長させていると思います。

以上のことが主とした様々な感情のねじれも加わって、モンゴル人が内モンゴル人を中国人と同じだと嫌う人が出るようになってしまったのではないでしょうか。

でもちょっとその嫌い方にはすごい偏りがあるように思えます。

モンゴル国立大学へ留学に来ている内モンゴル人を5人ぐらい知っていますが、みんな賢くて義理に厚いいいやつばかりです。

5人しか知らないので統計的には意味ないですが、内モンゴルの空気というのは彼らを通して伝わってきます。それはモンゴルと同じくとても心地よい風のようです。

ココに来て僕が思うのは「モンゴル人がもっと大人になってほしい」ということです。

やっぱりモンゴル族のお兄さんというか一番のメインはモンゴルに居住するモンゴル人でしょう。兄貴側から折れるのが筋ってもんです。

モンゴルという概念は元々一つの民族だけをあらわすような矮小な言葉ではなかったはずです。

今一度、モンゴルという言葉が何を意味していたのか、完全な資本主義国家としてモンゴル国家が成立してしまう前に、その血脈に眠っている思想を思い出して欲しいと願ってやみません。

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