宇宙兄弟 作者の魔力
「兄とは常に
弟の先を行ってなければならない
それが兄としての務め」
宇宙兄弟一巻の冒頭シーン。
少し頼りなさげな兄が、この言葉を頼りに背伸びしながらも頑張る姿が始めに描かれている。
このお兄ちゃんに共感した、日本中のお兄ちゃんやお父さん。
たぶん、かなりの人がこの兄の気持ちに共感しているはずだ。
僕もその中の一人。
だが、冒頭であの言葉とあの兄に共感してしまった人たちは、その瞬間に作者の大きな術中にはまっているのである。
それは何か。
「兄は弟より一歩前に行っていいなければならない」
これを現時点では成し遂げれていない兄を、成し遂げるまで見守ることになるということだ。
その頼りない兄に共感してしまった兄やお父さんは「やっぱり兄は弟を超えるものだ」
ということを確認して、自分の判断が過ちでなかったことを確かめるまでは、マンガを見続けなければいけない。
そうしないと、その兄に共感して信じた自分自身を否定することになるからだ。
「オレはこの兄がやってくれると直感で信じたからこそ、共感したのだ!オレの判断に間違いはない」
という自分の判断の正しさを証明するためには、その物語の兄が弟の先へ、
火星へ向けて旅立たなくてはならない。
冒頭の
「兄とは常に
弟の先を行ってなければならない」
この自分が信じるに至った根拠を探すためにも宇宙兄弟を最後まで見続けることになる!
ということ。
まさに妖術のようなすごい吸引力のある物語です。