読書について
「世の中の一般的な価値観で言うと、本を読んだほうが本をあまり読まないよりも教養が身につき、思考が深くなって、人生が豊かになると考えられています」吉本隆明
いきなり引用から始めてしまいました。
読書について、考えていきます。
吉本隆明が言うように、「本を読めば人生が豊かになる」というのが世間一般的な解釈だと思います。
がしかし、本当はちょっと違うと思います。
「本を読めば知識が増える」
ということは、正しいことだと思います。
でも
「本を読めば必ず自分のためになる」
これは嘘でしょう。
「本を読めば、利を得ると同時に、毒もまた得ると考えたほうがいいと僕は思っています。」吉本隆明
本を読んでも、必ずいいことばかりもたらすわけではありません。
本を読むことによって、色々な「利」をもたらすことがありますが、同時に悪いものも読書によって一緒に吸い込んでしまうと言っています。
得た知識によって自由な思考が妨げられたり、観念的になっていったりと、良くない方向へ向かうこともあるということです。
利のあるものには、必ず同じだけの毒もまたある。良いことだけっていうことなんかあり得ないんだよ。
と、吉本隆明はいっています。
そしてさらに、「利」に対して「毒」という対の表現にしたことが、吉本隆明のすごさを感じました。
この毒を、負や害という
「既に悪いものとして決定されている言葉」
にしなかったことが、僕は面白いと思いました。
「毒というのは利と一緒にある。そして逆説的な言い方をすると、毒は全身にまわらないと一丁前にならない」吉本隆明
一丁前になるためには、毒がまわらなければいけない。
これは、毒が「悪いもの」として終わるものではなく、その毒を極めれば良いことにも変わり得る、ということを言っています。
これによって、読書によって悪いことも起こり得るが、それを突き詰めることによっては、良いものにもなるという余地を残しています。
これはすなわち、善悪二元論という単純な話で物事を判断することはできないという認識に繋がります。
二元論ではなく、それ以外の選択肢。
単純な二元論で収めるのではなく、
「それ以外の価値を見出すのは自分次第である」
という広がりを持たせていることが吉本隆明のすごいところだと思います。
毒も全身に回ってしまえば、普通の良いこととは比べ物にならないぐらいの「良いこと」をもたらす。
結局は、なんでも自分次第であり、良いか悪いかなんていう単純な話で済むようなものというものは、本物ではないということですね。