史記 武帝紀 1 (ハルキ文庫 き 3-16 時代小説文庫)/角川春樹事務所
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文庫版がでたことを記念して、この小説がいかに面白く、いかに他の歴史小説と一線を画するものかを紹介します。
この小説がすごいのは、中華皇帝である劉徹の心の中を見事に描ききっているところです。
皇帝になんかなったことのある人はこの世にいませんが、我々現代に生きる人間が想像できる範囲の中で、おそらく最高に近いところまで皇帝という特殊な人間の心を描ききれていると思いました。
それぐらい、特異な皇帝という心の中にある「ゆらぎ」のようなものが、伝わってきます。
理解できると理解できないところのギリギリのせめぎ合いを突っ切りながらも、爽やかに皇帝がよみがえってきます。
しかしまだ1巻では、そこまで皇帝の心の中まで迫ってはいませんが、聡明な武帝という男の頭の中にあるイメージを具現化するために、周囲の新しい強者達が活躍をはじめます。
中でも、この物語の武帝に次ぐ主人公と言っても良い、元奴隷の衛青は優れた軍人でした。
元は奴隷の身分であったからと失うものの無い衛青は、ひたすら皇帝の意思を忖度することに努め、その想いを汲み、それまでの歩兵主力だった戦法から騎兵中心へと大きな転換を成し遂げます。
これは、勇猛さと騎馬であるという利点にあぐらをかいていた匈奴軍に対して、まさに驚きの出来事でした。
統制された衛青の騎馬隊は匈奴軍に対して連戦連勝を重ね始めます。
その時はじめて武帝劉徹は、今まで辛酸を舐めさせられていた匈奴を滅ぼすことが出来るのではないかと思い始めました。
今まで歩兵で守ることしか出来なかった漢軍が、匈奴に騎兵で勝利できるというのは、武帝劉徹の野望を開花させるに充分な出来事でした。
また衛青は、その気持ちを裏切るまいとさらなる勝利を目指して戦を重ねます。
しかし、どんどん希望が肥大する劉徹の意思に対して、徐々に衛青は無理な戦に追い込まれていくことになります。
一人の英雄劉徹を中心として、それに振り回されながらも激動の時代を荒荒しく駆け抜けていく将軍たち。
機動力に富んだ戦闘シーンも魅力的ですが、やはり劉徹を中心とした英雄達の考えや心の中がとても魅力的です。
他の北方謙三作品とは、少し違ったそれぞれ登場人物にも注目してみてください。
最後まで読めばきっと、中華皇帝という大きすぎる人間が持つ得体の知れない暖かさに触れることが出来るかもしれません。
とても大きな作品です。
気合い入れて読みましょう!!
コメント
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ぼくも、このシリーズちらりと読んだことがあります。迫力がありました。
鉄の考古学という本が、匈奴と前漢の激突に関してちょっとおもしろいこと言っていますよ。機会があったら読んでみてください。”もの”から見ると、いろいろ違った歴史が浮かんでくるのでしょうね。
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>sanukiさん
本のご紹介ありがとうございます!
早速読んでみますね^^
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>sanukiさん
と思って検索してみたら、アマゾンで取り扱いしていませんでした・・・
かなり古い本のようですね~^^;
図書館で探してみます!