文明の衝突を生きる
町田宗鳳
題名を見た時
「なんか重そう。」
と一抹の不安を覚えていたが、読み進めていくと予想外にサッパリした激動の人生が描かれていて、面白い。
この人、小学生にして家族の反対を押し切っての出家、禅寺での本格的な修行、アメリカハーバード大学への留学等、まったくもって普通じゃない。
禅寺の先輩イビリや、頭を剃り合いながら血だるまが出来上がるなど、自衛隊のようなノリがあって、親近感がわいた。
文体も、率直なわかりやすい文章で描かれていて、とても読みやすい。
この本と同時並行に、同じお坊さんが書いたチベット旅行記という本を読んでいたが(日本人で初めてチベットに入国した人)、この二人の僧侶?に共通するものを見つけた。
両者に共通しているのが、ものすごい苦難に遭遇した時の対処法。
我が身に降りかかっている苦難をまっすぐ受け止め、決して周囲を呪わない。
「死ぬ時は死ぬ時だ」
というある種の諦念のようなもので割り切りながらも、かえってその思い切りが良いのか、いつも絶体絶命に陥っても周囲の助けによってなんとかなっている。
まさに奇跡としか思えないのようなことが起きても、あれやこれやと理由を並べて奇跡が起きた訳を説明するわけでもなく、ただたんたんと
「とても不思議である」
と、のっぺりしているところが逆に気持ち良い。
厳しい修行を乗り越えたお坊さんならではの、「なんとかなる精神」が爽やかに伝わってくる、たいへん風通しの良い本でありました。
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