まえがき 自立と依存
どうして日本はこんな国になってしまったのか?
ぺりー来航からグローバリゼーションまで、みごとに一貫して対米関係を基軸に推移してきた。
意味は差異のうちにある。
記号とは、それが何でないかをいうものである。
他者としての清国から、なぜアメリカへシフトしたのか。
中国人と比べて違うところがあまりにも多いはずのアメリカ人を、なぜ自己を際立たせるための他者として受け入れたのか。
1章 歴史学と系譜学
歴史を捉える時、未決定に耐えることが知性には重要。
不合理な西への情熱
一人の人間の決断が国の運命も変えることができる。というのが世界への好奇心と自分の一挙手一投足がそのまま未来に対して決定的な影響力を及ぼすこともあるという希望につながる。
2章 ジャンクで何か問題でも?
食品にかかわる運動は強い政治性を帯電する。
美味しいと本人が思うものを食べるのがいちばん身体にいい。
3章 哀しみのスーパースター
どんなジャンルであれ、検閲を恐れて自主規制した表現が創造的になったり、アクティヴな批評性を持つということはありません。
アメコミから推察できる、アメリカ人が世界に抱いている本音
自分たちはこうやって悪を倒しているのにいっこうに感謝されない。
日本のマンガから推察できる深層心理
ロボットは軍国主義
少年は戦後民主主義
ロボットは駐留米軍あるいは核の傘
少年は自衛隊
4章 上が変でも大丈夫
アメリカははじめからずっとアメリカだった。
あめりの統治システムは、うっかり間違った統治者が選出されても破局的にならないように制度化されている。
5章 成功の蹉跌
アメリカの歴史が無い故のわずかな軍功を過大評価するところは、戦争被害をも過大評価してしまうことにつながる。
アメリカは戦争をやって負かした国がその後同盟国になったというブリリアントな成功体験がある。
6章 子供嫌いの文化
自己実現の妨害者は自力で排除すべしということが国是とされている社会で、もし子供が親の目に自己実現の妨害者と映った場合、どういことになるでしょう。
アメリカ映画はかわいくない子供たちばかり描いている。
ホームアローン チャイルドプレイ 宇宙戦争 チャーリーとチョコレート工場 エクソシスト オーメン
元々欧州では子供はかわいくないものであった。
母性愛神話等は子供はかわいくないという初期条件に対抗して立てられている文明的な装置である。
7章 コピーキャッツ
母性愛のイデオロギーと子供嫌いのイデオロギーが拮抗してるために、子供に対する態度が微妙になり、それがダブルバインドコミュニケーションとして、子供の精神に深刻なダメージを与えている。
8章 アメリカンボディ
いったん、わかりやすい社会の図式が示されると、その階級的な怒りを誰にでもわかる仕方で表現しなければならなくなる。
9章 福音の呪い
ブッシュのイラク開戦は、信仰上の理由の方が大きいのではないか。
聖職者が政治家になっていないという、完全な政教分離こそが宗教の圧倒的な影響力を担保している。
10章 メンバーズオンリー
フリーメーソンと墨家の共通点は、技芸における卓越した実力、厳しい戒律を課している指導者、特定の国家に従属しない、ハイレベルな情報にアクセスしている。
結社というものの本質的な排他性を担保しているのが最終的には成員の身体である。
11章 涙の訴訟社会
アメリカは、声を大にして他人の問題をあげつらう事が社会的に正しいとされているゆがんだ思想の末路を示している。
あとがき
トクヴィルが今になって読んでもわかるように書かれているのは、アメリカという国がいくら変わっても変わらない点に絞ったということ。
問題は、ぼくたち日本人がアメリカ固有の病に限って、選択的に思考停止に陥っているように見えること。
アメリカが将来没落していった時、日本は従者の呪いが解消されるわけでもなく、このままでは主人のいない従者になってしまう。
そうならないためにも、アメリカについて考える時に日本人はどのように知性が不調になるのかについて考えることが必要である。