山におもうこと。
車や電車の中から山を眺めていると
「あの黒々とした木々の中には何があるんだろう?」
ということをよく考える。
それで実際にその山へ行ってみるんだけど、やっぱり何もない。
取り留めのない普通の山道があるだけだ。
トトロはいないし、シシ神様もいないし、こだまにも会うことはできない。
汗水垂らして必死に登ったところで、特段面白いことは何もない。
でも何もいないことはわかっているんだけど、やっぱり遠くから山を見る度に
「あそこにはやっぱり何かいるんじゃないか」
と、また山に行きたくなる。
何でだろうか。
何で山に僕は登りたくなるんだろうか。
やはり、未知との遭遇だろうか。
山にはトトロはいないけれど、未知の生き物や植物との出会いの宝庫だ。
夏はものすごい強そうな蚊やアブを振り切るために高速で進まないといけないし、ひと気のない登山道では大鹿といきなり遭遇して腰を抜かしそうになったこともある。
また、僕の行く先々からザルを撫でているような音を出す謎の生き物に進路を阻まれたこともある。
やっぱり山には何かがいるに違いない。
はっきりとした形としては現れないけど、都会では間違いなく出会えない何かがいるんだと思う。
ただの錯覚かもしれないけれど、そういう体験や生き物との色々な接点を持つことは、昔からずっとそういうことがあったはずだ。
そしてその変わった体験が伝承となり神話となっていった。
たぶん、一種族でしかない人間との関係で汲汲としてるから、現代はしんどいんじゃないか。
もっと人間以外のたくさんの生き物と直に触れ合ったらいいと思う。
もちろん、直に触れ合うためには動物園とかではダメだ。
家で飼ってるハムスターを見て癒されるかもしれないが、それはただの都合の良い癒しに過ぎない。
その生き物がずっと生活してきた山や森や海にこちらからお邪魔してドアを叩く。
同じ立場で、同じ目線で出会う。
そしたら、きっと面白いことが起こる。
だから、僕はいつも山に行きたくなるのだ。