自民党が自衛隊を国防軍にすると言っている。
僕が国防軍と聞いて真っ先に連想したのは、「イスラエル国防軍」とナチスドイツの「ドイツ国防軍」だ。
イスラエル国防軍は、すごく強いことで有名である。
第一次中東戦争でテロ組織上がりのイスラエル国防軍が、アラブ連合軍を撃退しているし、その後もエジプトに一度やられた以外は連戦連勝している。
※詳細は下記参照
1948年 第一次中東戦争
一方ドイツ国防軍は、ドイツ第三帝国というものを作り上げるために、凄まじい破壊戦争を行ったのは、周知の通りだと思う。
他にも世界には国防軍があって、wikiにはざっと20カ国ある国防軍が記載されている。
国防軍とは?
国防軍は、その名の通り「国を守る軍隊」という意味を表している。
自衛隊も似たような意味合いだが、その言葉が内包しているイメージの違いはかなり大きい。
自衛と国防、この違いについては、また後で述べる。
さて、まず自衛隊を国防軍に変更したことによる良いことを考えてみよう。
国防軍になって起こる「良いこと」
1お金をたくさん使うことになる
自衛隊から国防軍に名前が変わるということは、装備品や平気に付けられた自衛隊という文字を国防軍に変更しなければいなくなる。
防衛庁から防衛省に変わった時も、その手のお金はかなりかかったと思うが、今回はその比では無いだろう。
防衛省に変わった時、僕はちょうど自衛官として勤務していたが、名前を変えるためにゴタゴタした記憶はあまりない。
既に支給されている装備品等は、庁だろうが省だろうがぶっちゃけ関係ない。
防衛庁の庁に二重線を引いて、省と変えとけば良かった。
しかし国防軍になるとすれば話は変わる。
ちょちょいと自衛隊のところに二重線を引いて「こくぼうぐん」と書いとけば良い、はずがない。
国防軍になると自衛隊という組織が持つ意味合いまで大きく変わってしまうからだ。
役割も変わる訳だから、適当には済ませれない。
だから名称を変えることで、たくさん税金を使うことになる。
自民党が言ってる、お金をいっぱい使って景気を刺激しようという政策にもピッタリ当てはまる。
2おじさん達がよろこぶ
自衛と国防の言葉が持つ意味合いで大きなポイントになるのが、ここだ。自衛隊が国防軍になることで、日本を愛する短絡的なおじさま達はこう思うだろう。
「ガッはっはっ、我らが自衛隊もやっといっぱしの軍隊になったねぇ。これで周辺国からなめられなくなる。わしゃ気分が良いよ!」
と嬉しそうに話している姿が目に浮かぶ。
3装備が変わる
国防軍であるからには、遠征できるだけの装備が必要になる。
アメリカ抜きで国を守るためには、攻めてくる敵国の基地を自力で黙らせる力が必要になる。
それに伴って行動範囲も広くなり、海外でのPKOや治安維持活動にも臨機応変に対応できるようになるだろう。
もちろんここでも、お金がいっぱい必要になる。
4兵器が安くなる
現在では、日本の国産兵器を海外に売ることが出来ない。そのため必然的に兵器の値段はくそ高くなっている。
僕が自衛隊で学んでいた最新式の地対空兵器である中SAMは、1SET揃えるのに目ん玉が飛び出るぐらいの費用がかかっていた。それもこれも、日本でしか使えないために生産数が少なくなり、開発費の回収のために1setあたりの単価を高くしなければならなくなる。
でも国防軍になったら、おそらく他国に日本の兵器を輸出することもできるようになるに違いない。
輸出できないような縛りがあっては、国防軍としての高度で高価な装備など整えることが出来ないからだ。
高くつきがちな防衛費も国防軍になれば、保有する戦力に比べて安くなる・・・かもしれない。
次に悪いことを並べてみる。
※既に良いことの中でも「お金を使う」というのをあげているが、これも裏を返せば(普通に考えれば)悪いことになるだろうが。
国防軍になることによって起こる「悪いこと」
1周辺諸国の対日感情の悪化
国防軍になるということは、その名前が持つきな臭さに対して中国等の周辺国は最大限に反応してくる。
しかも現在の中国としては、日本が繰り出した(形になっている)尖閣問題に対して有効打がうてていない状態だ。
日本へのパンチを繰り出しすぎてこれ以上日本との関係が悪化すると、経済に大きく響いてしまうからだ。日本との関係が悪くなることへの痛手は中国の方が大きいだろう。その上さらに国防軍などという挑戦的な名称の軍隊が日本に生まれるなんてことになれば、中国としてはどうすれば良いのだろうか。
もちろん中国国民の手前、中国共産党は何らかの対抗手段に出るしか無い。でも経済的に対抗するとなると、中国のダメージの方が大きくなる。
まさに中国にとっては八方塞がりだ。
そうなったらもはや中国に残された道は、少ないと思う。
それが何かはわからないが、中国が突拍子もないことをするに至る引き金を日本が引くことになるかもしれない。
そしてその責任を世界から追求されるのは、挑発してしまった日本だろう。
2国防軍=侵略軍と見られる可能性
かつての大日本帝国が朝鮮や満州を占領した大きな理由の一つとして、「国土防衛のため」というのがあった。
「日本の国土を守るために朝鮮半島を獲らなければならない、ソ連の南下を防ぐために満州も必要だ・・・」などと、日本を守るために必要とされる国土はどんどん大きくなっていっていた。
すなわち、「国防のために他国へ侵略することも仕方ない」というロジックを立てるのは不可能ではない。
だからもし自衛隊が国防軍になれば、日本人が考えている以上に他国は警戒感を抱くことになるだろう。あの時に侵略をされた韓国や中国の反応は凄まじいものになるはずだ。
多分、防衛するための侵略、というのが口実になるということを理解していないのは日本だけだろう。
3自衛隊の限界が露わになる
日本に独立した国防軍ができた以上、米軍が沖縄に留まる理由は薄くなる。
「中国の抑えはじまんの国防軍でよろしくね」
とかなんとか言われて色々と辛い立場に立たされる、かもしれない。
その時に名前が国防軍になったからといって、中国や北朝鮮との高度な情報戦に即座に対応できる経験があるわけではない。
その時になってはじめて、米軍のおかげで色々と助けられていたことに、気づくことになる。
ここまで考えてみて数的には、良いことが4つに対して悪いことは3つしかない。
でもその内容の深刻さは、国防軍にしたことによる良いことをはるかに上回る。
その状況に真正面から対処していけるだけの力が今の日本にあるとは思えない。
多分、国防軍にするという政策をうちだしたのは、改憲への布石と票集めでしかないと思う。
裏を返せば、ここまで突拍子もないことを言わないと政権はとれないという自民党の焦りの現れなのかもしれない・・・
天下の自民党にはあまり暴走して欲しくない。
以上