白壁が美しい鳥取県倉吉市から車で30分ぐらい行ったところに、関金温泉がある。
「眼精疲労を治しに鳥取へ来た」と、なるちゃん(八百屋BARものがたりの人)に伝えると「関金温泉もいいんじゃない?」と教えてもらい、なんとなく名前がかっちょよかったので行きたいなと思っていた。
その日は倉吉でカナダで活躍している日本人画家への100問100答というイベントがあり、イベント前のひと浴びとして倉吉から近いのもあって実際に行くことにした。
日本人画家への100問100答の様子
ナビを頼りに関金温泉目ざして進むと、どんどん暗い坂道を登っていく。
行き先をなんとなく関金温泉で一番大きくて綺麗そうな、なんとかという温泉にしたんだけど、着いた先は周囲の店は閉店しているような閑散とした温泉だった。
最初は引き返して別の普通っぽい温泉へ行こうとしたけど、引き返す道道に「関金温泉が出来て400年(うろ覚え)」というのぼりが多数あったので、それだけ歴史があるなら面白そうということで、坂道を登った奥にる関金温泉に入ることに。
料金が200円とリーズナブルだったのに若干の不安を感じながら、服を脱いで浴場内へ。
そこには四人も入ればいっぱいになりそうな木で出来た歴史の古そうな浴槽が一つだけで、他に壁の手すりと風呂桶がいくつかあるだけだ。
温泉が出てくる蛇口には古ぼけた文字で「飲泉可」と書かれ、注意事項がつらつら書かれている。
浴槽に入っているおっさんもどことなく昔の人という感じで、みな粛々と温泉に浸かっている。
僕が思っていた温泉というのは、シャワーがあって、サウナがあって、水風呂があってというようなイメージだったからそのギャップに少しびっくり。
それでも気分を入れ替え、厳粛な温泉の雰囲気を壊さないようにして浴場に入る。
狭い浴場に狭い浴槽なので、体を流すのも周囲に飛び散らないように気をつけなければならない。また椅子が無いので地べたに座りながら体を流さないとダメだ。
浴槽内では若干神経質そうな丸坊主のおっさんが、浴槽に浮いている、木の浴槽から剥がれたと思われるくずを掬っては外へ放り出している。
また後から古武士のようなおじいさんがやってきたり、強面の禿げたおっさんがやってきたりと、人の出入りはぼちぼち。その古武士が放つオーラはすごくて、周囲にいる人間など気にせぬ!とばかりに浴槽に使っていてもほとんど目を閉じていた。
飲泉可なので源泉掛け流しなんだろう。外は雨が降っていて寒かったが、体はかなり温まって、運転していたらガラスが曇ってしばらく夜風に当たって冷やさないとダメだったぐらいだ。
温泉の質も良かったと思うが、昔ながらの厳粛な雰囲気で浸る温泉もまた面白い経験だった。